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分割出願について

平成18年の特許法改正により、平成19年4月1日以後の特許出願についての分割出願制度(第44条)が改正されました

 この改正により、最初の拒絶査定の謄本の送達日から30日以内(拒絶査定不服審判を請求しなくても良い)、及び特許査定の謄本の送達があった日から30日以内の分割出願が可能となっております。

 ただし、このような分割出願が行えるのは、平成19年4月1日以後に出願されたものとされるため、留意が必要となります。出願日が平成19年3月31日までのものについては、拒絶査定があった後に分割出願したい場合は、拒絶査定不服審判を請求する必要があり(審判の請求日から30日以内の分割出願)、また、特許査定があっても、その内容について分割出願することはできません。

 今後の暫くの特許実務では、平成19年3月31日までの出願が多数、存在しますので、錯誤により、拒絶査定不服審判の請求をすることなく、分割出願してしまう、といった手続をしないよう留意が必要です。このような手続をすると、拒絶査定が確定すると共に分割出願も誤った手続で却下されますので(第18条の2)、その出願内容が救済できなくなってしまいます(分割出願する際に支払った印紙代については、第195条により返還されます)。

 なお、平成21年4月1日に施行された改正法(平成20年改正特許法)によって、拒絶査定不服審判の請求期間が改正(謄本送達後3ヶ月になります)され、それに伴い、分割出願できる時期も最初の査定の謄本の送達があってから3月以内(第44条第1項第3号)と改正されました。
この場合、第44条第1項第3号に関する改正法の適用は、改正法の施行日(平成21年4月1日)以降に最初の拒絶査定の謄本が送達され、かつ平成19年4月1日以後の特許出願について適用されることとなります(附則第2条第3項)。このため、平成19年3月31日までの特許出願について拒絶査定があった後は、拒絶査定不服審判を請求して、前置補正できるとき(補正書の提出と同時になります)に分割出願する必要があります。

 もちろん、平成19年4月1日以後の特許出願について拒絶査定がなされても、拒絶査定不服審判を請求すると共に、分割出願することは可能です。

分割出願は、主として以下のようなケースのときに考慮されるでしょう

(1)出願の単一性違反など

 最初の拒絶理由通知のときに、出願の単一性(第37条)の要件を満たしていないとの通知があった場合、或いは、拒絶理由通知後にした補正が、第17条の2第4項(シフト補正の禁止)の規定に該当してしまった場合など。

 このようなケースでは、審査されていないと指摘のあったクレーム(第17条の2第4項に該当したクレーム)について審査をしてもらいたければ、分割出願を考慮せざるを得ません。なお、第37条、及び第17条の2第4項は、拒絶理由ではあるものの、無効理由ではありませんので、この判断自体を争うよりは、分割出願した方が得策ともいえます。

(2)許可可能なクレームの早期権利化、拒絶クレームの再構築など

 クレームが複数あり、既に審査段階で、その内の幾つかが、拒絶理由を発見しない、との判断がされているようなケースでは、分割出願を考慮することがあります。

 この場合、審査において許可可能との判断がされているクレームを補正によって残しておき、拒絶理由が提起されているクレームに関する発明については分割出願した方が良い場合もありますので要検討でしょう。
通常、補正(前置補正を含む)は、同じ審査官が再審査しますので、許可可能との判断を既に出したクレームに限定した補正をすることで、そのまま権利化される可能性がきわめて高いと思われます(必要な部分についての早期権利化を図る)。そして、拒絶理由の対象となった発明については、分割出願して、できるだけ広い権利が取得できるよう、内容をじっくり検討したり、必要に応じて最終的に争うこともできます。
なお、平成19年4月1日以後の特許出願では、第50条の2の通知(拒絶理由の通知は最初であるものの、補正の制限が「最後」と同様になる)があることに留意すべきでしょう。

(3)その他

明細書内に開示されていた技術で、クレームアップされていなかった発明について、出願後に権利化を図りたいようなケースがあります。
また、第三者の実施状況、将来的な権利行使、ライセンスの供与等、戦術的な意味合いから分割出願を検討するようなケースもあるでしょう。

分割出願をするに際しては、留意すべき事項が幾つかあります

(1)出願日について

上記のように、平成19年3月31日までの出願と、平成19年4月1日以後の出願では、分割出願できる時期に相違がありますので留意が必要となります。

 ※平成19年4月1日以後の出願は、補正することができない期間(特許査定後、拒絶査定後で不服審判を請求する前)であっても分割可能です。

(2)コストについて

 平成19年4月1日以後の出願では、最初の拒絶査定の謄本送達後、拒絶査定不服審判を請求することなく、分割出願することが可能となりました。これは、拒絶査定不服審判を請求することで形式上、補正の機会を確保して分割出願をする、という従来の手法と比較すると、審判請求をすることなく分割出願が行えるため、コスト的に有利になることが指摘されています。

 ところが、以下のようなケースでは、分割出願を選択せずに、審判請求した方が、コスト的にも時間的にも有利になることがありますので考慮すべきでしょう。

 例えば、上記のように、クレームが複数あり、既に審査段階で、その内の幾つかが拒絶理由を発見しない、との判断が示されている状態で拒絶査定がされてしまったようなケースでは、分割出願をすることなく、そのまま拒絶査定不服審判を請求した方がコスト的に有利になることもあります。
すなわち、出願人サイドで、「拒絶理由が発見されていないと判断されたクレームに限定する」、との方針が固まれば、分割出願するのではなく、審判請求して、前置補正によって許可可能なクレームに限定すれば、そのまま同一の審査官が再審査するため、直ちに特許される可能性が極めて高くなります(審判請求書における「請求の理由」も簡単な記載で済みます)。

 分割出願に伴う印紙代(分割出願時の印紙代と出願審査請求に伴う印紙代)と、拒絶査定不服審判の請求に伴う印紙代とを比較すると、後者の方がコスト的に安くなるでしょう。また、審査着手までの時間を考慮しても、拒絶査定不服審判を請求して前置審査に移管した方が早期に権利化できるでしょうし、分割出願を選択した場合、その審査において、異なった審査官によって異なる判断が示される可能性もあり、権利化まで長期化してしまうことも考えられます。

 代理人によって手続する場合、上記の費用については代理人費用を考慮していません。印紙代以外の費用については代理人との間で相談となります。
審判を請求するに際しての補正(前置補正)は、発明を特定するための事項(補正前の請求項に係る発明)を限定するものとなるため要注意です(第17条の2第5項第2号)。例えば、最初の拒絶理由通知時において、独立クレームが拒絶の対象となっており、その下位にある従属クレームが許可可能であるとの判断が示された場合において、最初の補正で独立クレームに対して限定事項(許可可能な従属クレームと関係ない限定事項)を加えたにも拘らず拒絶査定されると、審判請求時の補正の適否は、その補正前の請求項に係る発明に基づいて判断されます。第17条の2第5項の適用については、必要以上に厳格に運用することがないようにする、との基本的な考え方はありますが(審査基準第Ⅲ部第Ⅲ節)、最初の拒絶理由の通知時において、許可可能と判断されたクレームについては、取り敢えず、拒絶の対象となった独立クレームの限定事項を含んだ形で、独立クレームとして補正しておくのが安全といえましょう。

(3)特許査定後の分割出願について(平成19年4月1日以後の出願)

 出願審査請求をして、その後、拒絶理由がかかることなく特許査定されてしまったようなケースでは十分に留意すべきでしょう。何らかの理由で権利化すべき発明が請求項に記載されていないこともありますので、自社の実施技術、或いは、他社の動向等を考慮して、明細書、及び図面を詳細に見直してみることに越したことはありません。また、意外にクレームが限定しすぎている可能性もあります。

 なお、特許権が発生してしまうと、もはや分割出願することはできませんので、特許査定の謄本の送達があった後に分割出願をする場合は、登録料を納付する前に行う必要があります。
また、一度拒絶査定を受けたものについては、その後の拒絶査定不服審判において、前置審査で特許査定となったもの、差し戻しの審決(第160条第1項)を経て審査によって特許査定となったもの、さらには、特許審決となっても、分割出願を行うことができませんので、留意が必要になります。

(4)拒絶査定後における分割について(平成19年4月1日以後の出願)

 分割出願できるのは、「最初」の拒絶査定の謄本の送達があった後に限定されます。このため、拒絶査定不服審判を請求した後に、差し戻しの審決(第160条第1項)を経て、審査によって再び拒絶査定がされたものは含まれません。
なお、そのような拒絶査定では、拒絶査定不服審判を請求して補正機会を確保し、これと同時に分割出願することは可能となります。

(5)分割出願の内容について(平成19年4月1日以後の出願)

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拒絶査定があったときの分割出願(審判請求を伴わない分割出願)、及び特許査定があったときの分割出願については、通常の分割出願の要件である、原出願の分割直前の明細書等の全部でないこと、及び原出願の出願当初の明細書等の記載事項の範囲内であること、という2つの要件に加え、「直前の原出願の明細書等に記載した事項の範囲内」、という制限が加わります。
 従いまして、出願後の補正において削除してしまった事項については、特許査定があった後は、もはや分割出願することができないので留意が必要となります(拒絶査定時における分割出願では、審判請求を伴えば可能と考えられます)。
いずれにしても、今後の特許実務では、技術的に内容が不明確になっている等の理由は別として、出願当初に記載した事項については極力、削除補正しない方が良いこととなります。

 審査官によっては、補正したクレームと、明細書の実施形態が一致しておらず、特許を受けようとする発明が明確でない等の拒絶理由を提起する可能性もありますが、そのような場合、意見書において分割の可能性があること、或いは面接等によって、その旨を伝えれば良いでしょう。

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例えば、拒絶理由がかかることなく特許査定されたような場合において、さらに、広い概念で権利を取得するべく、上位概念化する分割出願をしても、その分割出願と原出願との間で第39条が適用されることはありません。
ただし、上位概念化するに際しては、当然ながら、上位概念化できるに足りる内容(仮に補正しても新規事項とされない内容)が原出願の明細書等に記載されている必要があります。

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査定時における分割出願に限定されることではありませんが、分割出願をする際には、原出願の明細書、又は図面に記載された事項の範囲内で行う必要があります。
分割出願に関する判断基準は、補正に伴う新規事項と考え方が同様ですので(審査基準第Ⅴ部第1章第1節2.2の実体的要件)、
ア) 当初の明細書や図面に明示的に記載された事項、
又は明示的な記載がなくても、
イ) 当初の明細書や図面の記載から自明な事項、
となります。

 第三者との関係で、戦術的な意図をもって分割出願することもあるかと思われますが、原出願に記載された事項を超えた(自明性が疑わしいような)分割出願は、将来的に拒絶理由や無効理由となったり、場合によっては、審決取消訴訟に発展する等、問題が生じる可能性があります。

 例えば、原出願において、課題を解決する上で必須の要件とされている技術的な特徴を分割出願時に削除したり、原出願における特定の構成要素を、分割出願時に表現上、上位概念化する等、原出願において明示的な記載がなかったり、明確な根拠が見出せないもの等については、後に問題が生じる可能性があります。
これらのケースが、必ずしも、分割要件違反(新規事項の追加)と判断されるわけではありませんが、原出願の記載事項の範囲内での分割出願であるか否かについては、新規事項に関する審査基準や、新規事項に関する判例を参照することをお勧めします。

(6)上申書について

 分割出願するに際しては、出願人は、分割出願の審査のために必要な説明書(上申書)の提出が要請されています。

 分割出願する際の発明のポイントについては、出願人側が最も知悉するところであり、また、原出願との間の相違点についても、十分把握していることから、上申書を提出することで、審査をスムーズに進めることが可能となります。上申書を提出しないことによる罰則規定はありませんが、場合によっては、審査官から第194条第1項の規定に基づいて説明書類の提出を求められたり、或いは、説明書類の提出を求められたにもかかわらず提出を拒んでいると、分割出願が実体的要件を満たしていないとして審査されてしまう可能性があります(出願人にとっては不利になることも予想されます)。

 上申書を提出することにより、出願人が不利な取り扱いを受けるものではなく、また、実務上、分割出願の明細書の作成と同時に上申書を作成することにより、分割の要件を具備しているか否か、及び第50条の2の通知がされないようなクレーム作成など、客観的な検討ができますので提出することをお勧めします。

 なお、上申書に関しましては、原出願からの変更箇所を明示して、ア)原出願からの変更箇所が原出願の明細書等に記載された事項の範囲内であることの説明、イ)原出願に対して拒絶理由通知があった場合等、その拒絶理由については解消されていることの説明、ウ)原出願とは同一発明でない(第39条第2項に該当しない)説明、がされていれば良いでしょう。

(7)第50条の2の通知について(平成19年4月1日以後の出願)

 原出願と分割出願との関係において、いずれか一方の出願に拒絶理由の通知があった場合(殆どのケースでは原出願と考えられます)、他方の出願が、その拒絶の対象となったクレームと同一(完全同一は勿論、周知・慣用技術を付加した程度のものも含むとされています)である場合、第50条の2の通知がされます。
これは、いわゆる最初の拒絶理由通知であるものの、実質的に補正が許容される範囲は、第17条の2第5項に限定されるのであり、考え方としては、最初の拒絶理由=最後の拒絶理由となってしまいます。

 分割出願するに際しては、原出願において拒絶されたクレームをそのまま分割したり、或いは周知・慣用技術を付加しただけでは、確実に第50条の2が通知されることとなり、それに対する補正も制限的なものになるため、注意が必要になります。
上記(6)の上申書を作成することは、そのような通知を回避する上でも効果的と考えられます。

シグマ国際特許事務所