特許出願か実用新案登録出願か?
着想したアイディアについて、それを特許出願するか、実用新案登録出願するかにつき迷うことがあります。ここでは、それぞれの制度のメリット、デメリット等について挙げてみます。
制度上の違い
制度上、両者の最も大きな相違点は、特許出願は出願審査請求して審査官による審査を経た後、拒絶理由がなければ設定登録されるのに対し、実用新案登録出願は、審査することなく、出願してそのまま設定登録される点が挙げられます。このため、実用新案登録出願では、出願審査請求に伴う高額な印紙代を納める必要はありません。
その他、実用新案制度は、存続期間が短い(出願から10年)、保護対象が物品の形状、構造又はその組み合わせに限定される(方法は保護対象となりません)、権利行使する際に、一定の制限(特許庁に対して技術評価書を請求する)がある等、が挙げられます。
どちらを選ぶか?
実用新案制度の最大の魅力は、出願してから無審査で設定登録される(実用新案登録番号が付与される)点にあるでしょう。出願した後、形式的な審査はありますが、通常は、6ヶ月以内に設定登録がされると考えられます。
このため、第三者に対して信用性を向上させるための手段の一つとして利用したり、取引上のうたい文句にしたり、広告宣伝効果を狙ったりする場合など、有効となり得ます。
例えば、物作りをしている企業や個人事業者が、ある製品を市場に送り出す際に、その製品を取扱う小売店、あるいは問屋や商社などから、「何か権利を取得しておいた方が良いですよ」と言われました、とか、新たな商品を扱う小売業者から「パンフレットやチラシ、ホームページに載せる際の宣伝的な売り文句が欲しい」といった要望があれば、実用新案制度をお勧めすることもあるでしょう。
もちろん、新しい製品を世に送り出すのですから、現実問題としては、調査を詳細にしておくのが好ましく、また、権利の安定化が図れる特許出願を選択したいところですが、特許出願を選択するほど潤沢な資金がなければ、とりあえず、安価な費用で済み、早期に権利化して登録番号を取得しておくことは(ここが重要なポイントになります)、差し迫ってビジネスをする上では有効な手段になり得ます。
例えば、パンフレットやチラシに「実用新案登録第○○○号」とあれば、それを見た人に何となく技術的に優れた製品である、との印象を与えたり、或いは、取引関係をスムーズに行える可能性も出てくるでしょう(「実用新案登録第○○○号」と書かれているのを見て、「これは無審査での登録だから権利は安定したものではない」と察知できような人は、特許業界に携わっている人は別として殆どいないでしょうし…)。
また、ある程度、第三者に対しては抑止的な効果があれば良く、たとえ将来的に抑止効果が破れて類似品が出てきても、市場規模、代理人費用、裁判費用等を考えると、「権利行使する可能性はない」ということであれば、実用新案登録出願を選択することも考えられます。
その他
実用新案登録制度の魅力の一つとして、上記のように、早期に権利化される、ということがありますが、特許についても、早期審査制度(スーパー早期審査制度)があり、早期の権利化を図ることは可能です。このため、早期権利化、及び権利の安定化を望むのであれば、実用新案登録出願よりも、特許出願→早期審査が良いと思います。
また、実際に侵害品が出てしまい、権利行使を考慮せざるを得なくなった場合、出願から3年以内であれば、技術評価請求をせずに、特許出願へ変更するという選択肢もあります。特許出願に変更すれば、補正の自由度があり、また、その後に分割出願することも可能ですので、戦術論として考慮すべきかと思います(技術評価書請求すると、特許出願へ変更できませんので留意が必要です)。



